奴隷契約書:支配されたいM女との契約
出会い系サイトでの出会い
眠れない夜、ふとした気まぐれで開いたのは、どこか古めかしい出会い系の掲示板だった。
使い慣れているわけではない。ただ、無機質なスレッドの羅列が、現実の重さをぼかしてくれる気がした。
その中で、ひときわ目を引く書き込みを見つけた。
「M女です。奴隷契約書を交わせる主を探しています。信頼重視なので、直感的に違うと感じたらその時点で解散。」
短く、淡々とした文面。それなのに、どこか切実な響きがあった。
「東京近郊。冷やかしはご遠慮ください。」
冷やかしではないつもりだったが、好奇心に駆られて書き込んだ。
「契約書って、本当に用意してるの?」
数時間後、返信が届いた。シンプルで読みやすく、冷たさのない文体。
「はい。きちんと作ってあります。自分を預けるものなので。」
その言葉に、胸の奥がざわついた。
これは遊びじゃない。
彼女は本気で何かを差し出そうとしているのかもしれない。
興味と緊張が混じる中、俺は返信した。
色々と、相手としたいこと、詳しくプレイ内容、性癖のことも…。
その日のうちに即決とはいかない。
こういうときは、関係性を築くことも大切になる。
毎日、数通のやりとりを彼女とは交わしていた。
そして、2週間ほど経って、意を決して彼女を誘うことにした。
「直接会って話したい。静かな場所がいいかな。」
「人目につかないカフェ、知ってます。どうでしょう?」
ネット上のやり取りにしては、妙に呼吸が合っていた。
メッセージの行間から、彼女の真剣さが滲み出ているようにも感じていた。
約束の日、カフェに着くと、彼女はすでに片隅の席で背筋を伸ばして待っていた。俺に気づくと、軽く会釈して席を勧めた。
「掲示板の方、ですよね?」
向かいに座りながら俺が訊くと、彼女は静かに頷いた。
「はい、よろしくお願いします。」
「契約書、見せてくれる?」
彼女は小さく頷き、バッグから書類を取り出した。
契約書の重み
彼女──仮にハルカと呼ぼう──が差し出したのは、数枚のA4用紙だった。「奴隷契約書」とタイトルが打たれ、細かい文字が整然と並んでいる。手書きではなく、きちんと印刷されたもの。行為の範囲、セーフワード、禁止事項、アフターケアの詳細まで、法務書類のような緻密さだった。
この界隈では契約書自体は珍しくないかもしれないが、ハルカのそれは、個人的な執念のようなものを感じさせた。
「これ、全部自分で作ったの?」
俺が尋ねると、ハルカは視線を少し落として答えた。
「はい。自分を守るために。信頼できる人としか契約したくないので。」
その声は静かで、抑えた感情が滲んでいた。彼女の指先が書類の端をそっと撫でる仕草に、緊張と覚悟が混じっているのが伝わってきた。
契約書の内容は具体的だった。拘束、言葉による支配、限られた痛みを伴うプレイ…。だが、細部に彼女のこだわりが垣間見えた。
「行為後の会話は最低20分」「従者の感情を否定しないこと」といった条項は、単なるルールを超えて、彼女の内面を映しているようだった。
「かなり本気だ。」
俺が言うと、ハルカは小さく微笑んだ。
「本気じゃなきゃ、こんなことしません。」

彼女の理由
「なんでこんな契約書を?」
俺が尋ねると、ハルカは一瞬言葉に詰まった。カップの縁を指でなぞりながら、ゆっくり話し始めた。
「普通の関係じゃ、物足りないんです。自分を全部預けて、限界まで感じたい。でも、傷つくのは嫌で…ルールを決める、契約書を作るっていうのは、自分を守るためでもあり、SMらしいなって思ったんです。」
彼女の言葉には、従順さへの渇望と自己防衛の慎重さが共存していた。
「過去に、ルールなしで失敗したことがあって。それ以来、ちゃんと線引きしないとって思って。」
ハルカの声は淡々としていたが、目に一瞬の影がよぎった。彼女はM女として自分を差し出す覚悟はあるが、傷つくことへの恐れも抱えている。その矛盾が、契約書という形を取ったのだろう。
カフェの薄暗い灯りの下、俺たちは契約書の条項を一つずつ確認した。行為の頻度、場所、緊急時の対応。ハルカは俺の質問に丁寧に答え、必要ならその場でメモを加えた。彼女の真剣さが、俺にも本気で向き合うことを求めている気がした。
「試しに、1か月だけ契約してみるのはどう?」
俺が提案すると、彼女は少し考えて頷いた。
「そうですね…お願いします。」
契約の夜
数日後、ハルカから届いたメッセージにはこう書かれていた。
「場所を用意します。」
夕暮れ、指定された都心から離れた住宅街の一軒家に着いた。ドアを開けると、薄暗い照明と黒いカーテンが部屋を包み、厳かな空気が漂っていた。
ハルカはすでにそこにいた。黒いワンピースに身を包み、髪を下ろしていた。テーブルの上には契約書が丁寧に置かれている。
「来てくれて、ありがとう。…今日から、よろしくお願いします。」
その声は穏やかだが、どこか緊張が滲んでいた。
「始める前に、もう一度確認しよう。」
俺が言うと、ハルカは頷き、契約書を手に取った。セーフワード、行為の範囲、禁止事項、アフターケアの詳細を、彼女は指でなぞりながら確認した。
「これを守ってくれるなら、私は…全部預けられます。」
彼女の瞳には、従順さと決意が混じっていた。信頼の重さを改めて感じる。
「分かった。ルール通り進める。準備できてる?」
ハルカは小さく息を吐き、頷いた。
「はい…お願いします。」
部屋の空気が一瞬重くなり、俺たちは互いの目を見た。契約書に基づく「行為」が始まる瞬間が近づいていた。
心を差し出す瞬間
ハルカが部屋の中央に立ち、ゆっくりと目を閉じた。ワンピースの裾を握る指先に、微かな緊張が垣間見えた。
「これから、私はあなたのもの。」
彼女の声は低く、覚悟が宿っていた。
ハルカは目を開け、俺をじっと見つめた。
「ハルカ…です。ご主人様。」
「そこに立ったまま、俺の言葉を聞け。動かないで。」
俺はゆっくり近づきながら指示を出した。ハルカは唇を軽く噛み、動かなかった。
「自分の服を脱げ。」
俺の言葉に、ハルカの身体が僅かに震えた。
だが、躊躇いは短かった。ワンピースのファスナーを下ろす音が静かな部屋に響く。
肩から布が滑り落ち、白い肌が露わになった。
下着はシンプルな黒。彼女は最後の一歩を踏み出し、全てを晒した。
「よくできた。」
俺は彼女の頬に手を伸ばした。指先が触れた瞬間、ハルカは僅かに眉を寄せた。
「怖い?」
彼女は首を振ったが、声は震えていた。
「大丈夫です…ちゃんと、感じたいから。」
その言葉に、欲求と葛藤が混じるのが分かった。
「ワンピースを拾え。四つん這いになれ。」
ハルカは頷き、床に手をついた。ワンピースを口で咥え、ゆっくり膝を折る。姿勢が整うと、俺は彼女の頭を軽く撫でた。
「犬みたいだな。」
ハルカは目を伏せ、唇を強く結んだ。頬が僅かに赤らんでいる。俺は彼女の背中を軽く叩いた。
「ワンって鳴け。」
彼女は一瞬ためらい、ゆっくり口を開いた。
「ワン…」
声は小さく、消え入りそうだったが、確かな響きがあった。ハルカは視線を床に落としたまま、俺の次の命令を待っていた。
「顔を上げろ。」
彼女はおずおずと視線を上げ、目が合う。俺はもう一度彼女の頬に触れ、今度は軽く押さえつけた。
「お前の視線は俺にだけ許されるんだ。」
ハルカの瞳に困惑と期待が交錯する。
「今日のお前は、俺の命令で動く犬だ。」
彼女は小さく頷いた。震えは増しているが、視線は逸らさない。
「…はい。」
その声は明確だった。俺は彼女の髪を軽く掴み、強い視線を送った。
「もっと言ってみろ。自分が誰のものか。」
ハルカは一瞬唇を噛み、大きく息を吸い込んだ。
「私は…ご主人様の犬です。」
首輪の儀式
「まずは、お前に似合うものを着けよう。」
ハルカは小さく頷いた。俺は用意していた黒い革の首輪を取り出し、彼女を部屋の中央に立たせた。控えめな光沢が薄暗い部屋で映え、ハルカの目がその首輪を追う。
「これを着けることで、お前は俺のものだと自覚するんだ。」
俺はゆっくりと首輪を彼女の首に巻いた。金具を締める瞬間、彼女の肩が僅かに震えた。
「どうだ? 感じるか?」
「…はい。ご主人様のものだと…感じます。」
彼女の声には緊張が滲んでいた。俺は首輪に指をかけ、軽く引っ張った。ハルカの身体がわずかに前に傾く。
「この首輪は、お前の自由を俺に預ける証だ。分かるな?」
ハルカは頷き、首に触れる指で自分の覚悟を確認するようだった。俺は彼女の胸元に手を伸ばし、ブラジャーのホックを外した。支えを失った胸が露わになり、彼女の身体が震えた。
「目を逸らすな。」
俺が言うと、彼女は恐る恐る顔を上げた。瞳孔がわずかに開いている。
「自分で服を脱いだ時と、今、首輪を着けられた時、どちらが恥ずかしい?」
ハルカは俯きかけたが、俺の視線に気づいて顔を上げた。
「…今の方が、恥ずかしいです。」
その答えに満足し、俺は次のステップに移った。
「跪け。」
ハルカは膝をつき、俺を見上げた。俺は彼女の首筋に手を這わせ、軽く撫でた。
「お前が動けるのは、俺の指示がある時だけだ。いいな。」
彼女はゆっくり頷いた。息遣いが少し激しくなる。俺は彼女の髪を掴み、上を向かせた。
「もっと見せろ。お前の全てを。」
ハルカは震えながらも視線を逸らさなかった。
「私の全てを…ご主人様に。」
俺は彼女の口に指を突っ込み、舌を軽く押さえた。
「お前の言葉は俺のものだ。勝手に発するな。」
指を引き抜くと、彼女の唾液が糸を引いた。俺は唇を拭いながら言った。
「分かったら返事をしろ。鳴くんだ。」
ハルカは一瞬ためらい、声を絞り出した。
「わ…!ワン……!」
支配と屈服
「四つん這いになり、尻を向けろ。」
ハルカは躊躇いがちに指示に従った。白い肌が薄暗い照明に照らされ、俺は彼女の背中を軽く叩き、尻を撫でた。
「お前は俺のものだ。分かってるな?」
ハルカは小さく呻き声を上げ、視線を逸らさなかった。
「はい…ご主人様。」
俺は首輪に繋がるリードを手に取り、軽く引っ張った。彼女の首がわずかに動き、息が一瞬止まる。
「もっと強く鳴いてみろ。」
彼女は一瞬ためらいながらも、大きく声を上げた。
「ワン!」
その声には不安と期待が混じっていた。
「そうだ。それでいい。」
俺は彼女の尻を軽く叩いた。鋭く、だが優しく。ハルカの身体がびくりと跳ねる。
「痛い?」
「少しだけ…でも、大丈夫です。」
彼女の声はかすれていた。俺は彼女の尻を揉み、柔らかい感触を味わった。
「お前はいい反応をするな。」
ハルカは息を呑んだ。
「嬉しい…です。」
彼女の声に微かな興奮が宿る。俺はリードを握り直し、強く引いた。
「立ってみろ。」
ハルカはゆっくり立ち上がった。足元が僅かにふらつく。俺は彼女の目を見つめた。
「お前は今どんな気持ちだ?」
「…嬉しいです。ご主人様のものになれて。」
彼女の言葉には嘘がないように思えた。俺は彼女の頬を優しく撫でた。
「素直になれ。もっと欲しいなら言いなさい。」
ハルカは目を閉じ、小さく口を開いた。
「もっと…ご主人様に触ってほしいです。」
俺は頷き、彼女の肩を軽く押した。
「自分で下を脱げ。そして俺の前で跪け。」
ハルカは一瞬戸惑ったが、下着に手をかけた。全てを脱ぎ去る様子を、俺は見つめた。彼女は俺の前に跪き、視線を上げた。
「全てお見せします…ご主人様。」
その声には決意が宿っていた。

陶酔の淵
ハルカを抱え上げ、ベッドへ運んだ。彼女の身体は熱を帯び、表情は虚ろだった。俺は彼女の上に覆いかぶさり、唇を塞いだ。舌を絡めると、ハルカは弱々しく応えた。
「…もっとください。」
俺は彼女の頬を撫で、耳元で囁いた。
「壊してほしいんだな。」
「はい…壊してください。何もかも、ご主人様に。」
彼女の声はかすれ、切実な願いが込められていた。俺は首筋に唇をつけ、強く吸い付いた。手を胸に伸ばし、優しく、時に強く揉む。
「…っあ!」
ハルカは喉をのけ反らせ、掠れた声で叫んだ。
「セーフワードはちゃんと、覚えてるか?」
俺が問うと、彼女は目を閉じ、微かに頷いた。
「はい…大丈夫です。ご主人様を信じてます。」
その言葉に、俺の胸が一瞬熱くなった。彼女の信頼が、契約書の重みを突きつけてくる。俺は再び口づけ、深く、彼女の全てを受け止めるように。
「望み通りにしてやる。」
唇を離すと、ハルカの目に涙が浮かんでいた。悦びの涙だ。俺は彼女の太ももを掴み、大きく開かせた。
「見てみろ。」
彼女の秘所を指し示すと、ハルカは視線を下ろした。そこは濡れ、ヒクヒクと震えていた。
「これがお前の本当の姿だ。」
ハルカは頬を赤らめ、両手で顔を覆った。
「見ないで…ください。」
だが、指の隙間から覗く瞳は期待で潤んでいた。俺は彼女の片足を肩に乗せ、もう片方を抱え上げた。
「もっと見せてやる。」
俺は彼女のアソコに顔を近づけ、舌でそっと舐め上げた。ハルカは身体を激しく仰け反らせる。
「ああっ!そんな…ダメ!」
「何がダメなんだ?こんなに喜んでるのに。」
俺は舌と指で敏感な部分を探り当て、執拗に愛撫した。ハルカは腰を浮かせ、激しく喘ぎ始めた。
「やっ!そこ…んんっ!」
彼女の手が俺の頭を押さえつけようとするが、力が入らない。俺は動きを速め、彼女の嬌声が大きくなった。やがて、ハルカは全身を震わせ、絶頂に達した。
「っ…!あっ…!」
彼女は声にならない悲鳴を上げ、身体を震わせた。俺は彼女の太ももを抱え直し、優しく撫でた。
「まだ終わらないからな。」

ハルカは荒い息遣いの中で、俺を見つめた。信頼と悦びが混じる瞳に、契約の重みが宿っていた。
俺は何度も何度も彼女をひたすらに責めた。
奉仕されるよりも、とにかく今日は彼女を可愛がりたい気持ちが強かったのだ。
終わりの先にあるもの
数時間後、ハルカはベッドの上でぐったりとしていた。身体は汗ばみ、息遣いは荒い。目は虚ろで、意識は朦朧としているようだった。
俺は彼女の傍らに座り、頭をそっと撫でた。
「満足したか?」
ハルカは小さく首を振る。疲れ果てた身体で、微かに震える指先が俺の手を握った。責めることがメインで、奉仕をほぼさせていない。
俺が射精をしていないことへの不安が、彼女の瞳にちらついているようだった。
俺は彼女を抱き起こし、優しく声をかけた。
「今日はよくやった。十分だ。」
彼女は微かに頷いた。疲れ果てているのが分かる。俺はハルカを横たえ、布団をかけた。
「ゆっくり休め。」
彼女の瞼が重たそうに落ちていく。俺は彼女の頭を撫で続けた。ハルカは意識を失うまで、俺の手を握っていた。
契約書には「アフターケア」の項目があり、行為後のフォローの重要性が書かれていた。単なる快楽の提供ではなく、相手のメンタルケアが求められる。ハルカが眠りにつくと、俺は部屋の明かりを落とした。彼女の呼吸音だけが静かに響く。
俺はハルカの傍らに腰掛け、寝顔を見つめた。この契約は始まったばかりだ。今日、俺たちは確かに「何か」を共有した。言葉にできない、深い絆のようなものかもしれない。
ハルカの手を取り、そっと握る。冷たい指先に、微かな温もりが宿っていた。俺はいつの間にか眠りに落ちていた。ハルカの隣で微睡む中、奇妙な幸福感が胸に広がった。
俺たちはすでに互いに依存し、必要としている。この契約の名の下に結ばれた関係は、どこへ向かうのだろうか?









